ここらぼスクール

↑ ここらぼスクール2009へ戻る




住まいの快適さとは、どんなことでしょう?
今回行われた講座では、自然の力を利用した建築環境づくりと、人間の身体との関係について研究をされている、 宿谷昌則先生にお越し頂き、健康で快適な住まいの環境についてお話して頂きました。

皆さんは、一日どれくらいの時間を建物の中で過ごしますか?

実は、住まいの中だけでなく、仕事場や学校などの建物に滞在している時間までを含めると、 私たちは一日90%ぐらいの時間を建物の中で過ごしています。仮に人生を80年として計算してみると、 約70年を建物の中で生活している事になり、私達にとって住まいや建物の環境は一番身近な環境であることが分かります。 身体の延長だと考えることも重要です。

近年、地球環境問題が大きく取り沙汰されていますが、身近な環境である建物の話をせずに、 いきなり地球環境の事を話しても、何から考えればいいのか分から無くなってしまいます。 もともと、私達の身体は自然であり、自然環境に適応するように出来ています。それを忘れて、 快適性を得るために室内環境を機械だけに頼ってコントロールしようとした事が、 地球温暖化問題やエネルギー問題を引き起こしている要因の一つだと考えています。 私達の創ってきた建物と自然とを切り離して考えるのではなく、 暮らしの中での快適性と地球環境とを繋がったものとして考えることが大切ではないのでしょうか。

講師

身体の適応能力

生命誕生から今まで、地球の環境に適応しながら生きてきた記憶が、私達の身体のDNAの中には蓄積されています。 それによって、私達の身体は自分の置かれている環境や状況を瞬時に判断し、 生命の危険を回避するような生きる力を持っています。安全に、そして健康的に生きていくためには、その適応能力が正常に働かなくてはいけません。

しかし、私達は身体の機能の事を忘れ、表面的な利便性や快適性を求めて、石油や原子力を利用する技術を多用し、 建物の中に自然環境とかけ離れた人工的な環境を作ってきました。 そのような技術一辺倒の室内環境づくりになってしまった事が、私達の身体の健康を阻害している要因になっています。

実験データを見ていただくと、Aさんは汗が出ないために常に体温が高く暑いと感じ、 Bさんは汗をかく事で表面の温度が下がり暑さも軽減されていることが分かります。 温度が高く湿度が低い室内環境では、本来汗が出て蒸発することによって身体の熱は奪われ、 表面の温度は下がるはずです。しかしAさんのデータを見ると、汗が出ない事で身体の熱が放出されにくくなってしまい、 暑く不快だと感じています。この二人の実験結果の違いの原因は、普段暮らす環境にあります。

私達の身体には、外部の温度が変動しても、体温をほぼ37度に保つ究極の暖房・冷房装置が備わっています。 しかし、暑さが嫌いだからと冷房をかけて室内環境を安易にコントロールしていると、周囲の温度環境に反応出来ないといった、 身体の適応能力を壊す原因になってしまうのです。人の身体は発熱密度が高いため、汗をかけないという事はとても重大な問題です。 現在では、微熱になりやすい子供や朝体温が上がりづらい低体温の子供も増えていますが、そのことからも、いかに普段の生活環境が、 人体に大きな影響を及ぼすかという事が分かります。身体の適応能力が正常に働くような、健康で快適な住まいの環境づくりを考えて行く事が大切なのです。

冷房が及ぼす身体への影響

エクセルギー

▲ページの先頭へ

暑さはどこからやってくる

では室内において、何が私たちに暑さや寒さを感じさせるのでしょう。家の中で「暑いな〜」と感じる時、 空気の温度が高いからだと思っていませんか?空気の温度も関係しますが、実は、暑さの原因は、壁や天井の表面から放出されるのです。

あらゆる物には温度が蟻、その温度に応じて空気を媒体としない「電磁波」として運ばれてくる熱を放出しています。 それらを『放射熱』と言います。例えば、焼肉屋さんで熱い鉄板を目の前にして座っていると顔のほてりを感じますが、それも放射熱いよるものです。

夏なら、太陽からの放射熱によって熱せられた屋根や壁が、室内側の表面温度を高くし、そこから放射熱が出ます。 特に窓ガラスは太陽からの光をたくさん透過しやすいため、床や壁で光が吸収され、 結果としてたくさんの熱を放射してしまいます。これらの放射熱が原因となり、私たちに暑さや寒さを感じさせるのです。

「放射熱」を上手に利用した暖房の仕掛けの例として床暖房やパネルヒーターがあげられますが、 このように放射熱を上手にコントロールする事が、室内環境の心地よさと結びついていくのです。

▲ページの先頭へ

器をしっかりつくると自然のちからが活きてくる

私たちが感じる暑さは、放射熱が大きな要因になることがわかりましたが、暑さを防ぐためには、 どのような建物にしたらいいのでしょうか?まず、屋根や壁の断熱性能を良くする事が重要です。 それは、天井や壁の室内側の表面温度を、冬には上げ、夏には上がらないようにできるからです。

断熱性や遮熱性を上げると聞くと、建物と自然が遮断されるようなイメージを持たれる方もいると思いますが、 器(建物)をしっかりと整えることで、室内の環境をむしろ開放することができます。また、省エネルギーにも繋がり、 環境負荷を軽減することができます。窓ガラスに緑のカーテンを施したり、風を取り込むなど自然の力を上手に利用し、 機械に頼らない快適性を得る事もできると思います。今までは快適性というのは、エネルギーや石油などの資源をたくさん使うことで、 得られると考えられてきましたが、身近な環境である住まいをしっかりつくり、 エネルギ資源の使用をむしろ減らした方が、私たちの身体にとっても健全なことなのではないでしょうか。

暑さの原因は放射にあった

暑さを防ぐには…

▲ページの先頭へ

快適へのみちしるべ

自然界では「快」だけ存在するなんてことは無いですから、不快の中でも「快」の部分をちゃんと見つけられる身体を持っている事がとても大切です。 今までの技術は、「快適」という一つの言葉だけで、究極の快適環境をつくることを目指してきました。 そして、それは空調などの機械によって与えられるものだと、私たちはどこかで思ってきました。

しかし、今回お話したように、「快適」といのは、私たち自身の身体の仕組みと、それを取り囲んでいる身近な環境にあるのです。 そのため、身体がうまく反応できる適切な建築環境づくりが大事であり、合わせて、機械や電気の技術から、 自然の力を生かすような技術へとシフトしていくことが重要ではないかと思います。 そして、これからの事をちゃんと考えていくことが、結果的にCO2の排出量削減などの地球環境問題の解決に繋がると考えます。

ぜひ今回ご紹介した内容を参考にして熱の経路を知ってもらい、皆さん自身がご自宅の中で新しい発見をしていただきたいと思います。 きっと、皆さんなりの快適な暮らし方を、楽しみながら見つけていただけると思います。ご清聴ありがとうございました。

※宿谷昌則氏による、講演会から抜粋しました。

▲ページの先頭へ

study!緑のカーテンと白いカーテン

夏は暑さを和らげるために、簾などにより日差しを除けますが、これはとても有効的です。日除けが吸収した熱を風が逃がしてくれるため、 日除けが無い場合に比べて涼しくなります。

 太陽の光をただ遮れば良いということならば、簾と同様、カーテンも日除けになると思われがちですが、 これはあまり効果がありません。逆に、ひどい時には40度近くにもなるカーテンからたくさんの熱が、室内に入ってしまいます。 これでは意味がありませんね。熱を遮るには、室内側でなく、窓ガラスの外側で日除けする事が大事なのです。 冷房・エアコン装置の効率を改善するよりも、これは住宅の場合、圧倒的に効果があります。熱の移動の仕方を理解する事で、 ほんの少しの工夫でも、環境はドラマチックに変化することがわかるのです。

東京都のある小学校で、緑のカーテンをした場合と、白いカーテンを閉めた場合では、室内環境がどれくらい違うかを測定してみました。

サーモカメラで窓の室内側の温度を測定すると(下図)、白いカーテンを閉めた教室は、冷房した状態で平均温度は33度です。 もう一方の、緑のカーテンの教室は、冷房はなく、窓を開け通風しているので空気の温度は高めですが、窓の平均温度は31度です。 この時、2つの部屋を行ったり来たりしてみると、確かに冷房をした教室は冷たいですが、緑のカーテンの教室は居られない環境ではない。 でも、もし白のカーテンの教室で、冷房をしていなかったら、暑くて居られない状態です。

さて皆さんは、どちらの環境を選びますか?…健康や環境の事を考えると、やはり「緑のカーテン」の方ではないでしょうか。 身体や建築、熱の事を学んで、皆さんが何を選択するかで、暮らしというのは、良い方にも悪い方にも見い出せるのです。

実験図

▲ページの先頭へ

やってみよう!自然を利用した夏の快適術
やってみよう!自然を利用した夏の快適術
やってみよう!自然を利用した夏の快適術 やってみよう!自然を利用した夏の快適術

▲ページの先頭へ

参加者の感想/スクールを終えて

  • 建築環境について、人の身体という身近なところに引き寄せて説明していただいたのが新鮮でした。 程よい「快」を得るための適切な環境づくりが大切ですね[30代/女性]
  • 最高に勉強になりました。日々、なんとなく感じていた事を深く教えてもらい、 新たな視点・考え方を得ることができました。本当に良かったです。[30代/男性]
  • 自然の間に存在する建築が、快適に生活するのに大きな役割を果たすということが、 とてもよくわかりました.放射に注目すると快適さが得られやすいということなので、 緑のカーテンなど実践したいです。[30代/男性]

スクールを終えて

先日、今年の春先に完成したお宅に伺った時、 「朝日が射す東面の窓は、お昼まで雨戸を日除け代わりに閉めておくと涼しい」とお聞きし、 改めて住まいの器がしっかりしていれば、生活の中で住まい方を自分でつくっていく事ができるのだと実感しました。

今までは、ものすごく便利で快適でなくても、夏は暑いもの、冬は寒いものだから、 多少の我慢はしょうがない、ちょっと不便を楽しむ生活ができれば環境のためにも良いんじゃないかな、と 漠然に思っていました。でも、熱の動きをたどる事で、暑さ寒さを和らげる方法を発見し、 実際に体感してみる面白さを味わえば、「次はこれやってみようかな?」といった楽しみも生まれました。 こんなひと手間なら、不便なんて言わず、楽しみながら「快」を見つける暮らしができそうです。 皆さんも、健康な身体のためにも、熱がどう動くのか知って、楽しみながら室内環境づくりを始めてみてください。

(文/ココラボ 夏梅真澄)

▲ページの先頭へ

↑ ここらぼスクール2009へ戻る